お正月に掲載した錦絵。
![](https://www.blueindexstudio.com/wp-content/uploads/2021/03/th_隅田川花見美人-1.jpg)
作品名:堤の夜桜の花見美人(つつみのよざくらのはなみびじん)
板元:馬喰町三丁目 江﨑屋辰蔵
落款・押印:香蝶楼豊国・年玉印
絵師:豊国III(国貞、自称2代目豊国)
改印:村 1843(天保14)年〜1847(弘化4)年
出版時期:1844(弘化元)年〜1847(弘化4)年
この作品はボストン美術館にも収蔵されている。おかげで3枚続きの1作とわかった。
手元の作品はそのなかでも特に満開の桜の木が多く描かれている。一方、他の作品には対岸や川に浮かぶ船、中洲もみえて、夜桜名所の隅田川堤であることが一目瞭然だ。
改印は3作とも同じなので出版時期は近いようだ。板元も同じ。ただ署名は、下の左1作だけ「国貞改二代豊国画」と記されている。
![](https://www.blueindexstudio.com/wp-content/uploads/2023/08/SC176950-1024x497.jpg)
MFA: 11.15819-21
そして真ん中と手元にある右側に置かれる作品が「香蝶楼豊国画」の署名。
国貞の豊国襲名は文献上1844(弘化元)年とされている。「二代」と自称していたが実際は三代目。3枚のうち襲名をアピールする「国貞改二代豊国画」署名の作品が最初に出版された可能性は高い。そしてこの連作は豊国を襲名してまもない頃に出版されたのではないかと推測され、出版年の仮定は1843年からではなく、1844年12月から始まる弘化元年から1847(弘化4)年考えられないだろうか。
同じ板木の作品がオンライン上で見つかると、画像を拡大して版に刷られた木目を見たり色の違いを見たりといろいろな比較ができる。特に海外の美術館はコレクションをデータベース化してオンラインで閲覧できるようになっているところがかなり多い。その点ではありがたい時代になったとおもっている。
<参考文献>
石井研堂 1920「錦絵の改印の考証:一名・錦絵の発行年代推定法」伊勢辰商店
小林忠・大久保純一 2000「浮世絵の鑑賞基礎知識」至文堂
<参考サイト>
「Women Viewing Cherry Blossoms at Night on the Riverbank(堤の夜桜の花見美人)」Museum of Fine Arts Boston(3/21/2021閲覧)
https://bit.ly/3f64VgX