芝居番付

今日は「芝居番付」について。

美術館などでの作品鑑賞のときは何も考えずに作品に思考を委ねてしまうが、錦絵に関しては、芸術性や巧みな意匠もさることながら時代考証もかなり興味深い。

現在、《妹背山婦女庭訓》と《頓兵衛娘於ふね》という二作品を紹介継続中だが、2作とも錦絵の中では歌舞伎役者を描いた「役者絵」というジャンルに入る。

そこで「芝居番付」の登場だ。「芝居番付」とは、江戸時代の歌舞伎公演に関わるポスターやチラシ、パンフレットなどのことでランキング形式になった刊行物の総称。これが、役者絵の謎解きには欠かせない資料のひとつなのだ。

芝居番付には「顔見世番付」「役割番付」「辻番付」「絵本番付」の4種類がある。

まず「顔見世番付」。歌舞伎公演の一年が始まる11月の顔見世興行前に刊行されるもので、この興行からむこう一年間の契約をした役者や狂言作家(物語作家)など、一座のメンバーを紹介するものだ。

「役割番付」は配役表。各興行の前に刊行されるが台帳(脚本)が出来上がる前に作られるので、あくまで予定の配役表。

「辻番付」は人通りの多いところに貼ったり、贔屓筋に配る興行宣伝用ポスター兼チラシ。ちなみに初日興行後の追加告知には小さめの辻番付「追番付」が刊行される。

最後に「絵本番付」。芝居の内容を絵で展開した十数ページの小冊子だ。現在のプログラム。興行が始まってから劇場や「芝居茶屋ー客の案内や食事・休憩の世話をする茶屋ー」で販売された。京都・大阪では「絵づくし」と呼ぶそうだ。

芝居番付は江戸のものと京都・大阪のものでは若干仕様が違ったようですが、役割は共通している。特に「絵本番付」や「辻番付」は役者絵の制作年や描かれた役者の特定に大変有効だ。

番付そのものが現存しているか、そして私の場合オンライン上で閲覧できるか否かが運命の分かれ道ではある。