千秋万歳

芝居番付でも登場した千秋万歳」について。

《神霊矢口渡》の絵本番付でも「千穐万歳 大入叶」とあった。
江戸時代でいえば芝居や相撲など、観客を入れて娯楽として興行する催事の場や広告などで見られる常套句だ。

「千」も「万」もとても大きな数字を意味する漢字。「歳」は人の年齢や年月を表す意味で日常的につかう。「秋」は?疑問だった。すぐに角川漢和中辞典で引いた記憶がある。

「秋」は四季の三番目の季節という意味のほかに、年月や歳月といった「歳」と同じ意味があるのです。秋は収穫の時期。農作業に携わる人たちにとっては一年のサイクルが収穫のときに切り替わるのかもしれない、と想像して秋の意味が強く印象に残ったものだ。

ということで、千秋万歳は、千年万年と同じく永遠の意味や長寿を言祝ぐ意味で使われる。

ところで絵本番付では「秋」が「穐」になっていた。歌舞伎や相撲など験を担ぐ業界では「秋」の旁の「火」が火事を連想するとして、「秋」の古字、旁が亀の「穐」を使うようになったのだそうだ。火事と喧嘩は江戸の華というほどに火事が多かった江戸時代。「亀は万年」といわれる縁起がいい動物。変えたくなる気持ちもわかる。

「千穐万歳 大入叶」歌舞伎の場合は「観客が押し寄せて千秋楽まで大入りがつづきますように」といったところだろう。

そういえば、相撲番付の最後にも「千穐万歳大々叶」とある。