さくら、さくら…

春先おひさまが機嫌よく顔を出し始めると、頭に浮かぶのはやっぱり桜、さくら、サクラ。

日本の春の話題は何をおいても桜。でも、国を離れていても日本人の間では春の会話はやっぱり桜だ。3月帰国などど口にしようものなら、「いいなぁ、お花見!」200%の確率でこういう返事がかえってくる。どこかで桜が見られるという話題は、たとえ初めて会った日本人同士でもかなり盛り上がる話題。

日本人同士というのは意外と人見知りというか、海外で同郷の人を見かけても気軽には近づかない。これは親しい長期在住者のなかでは皆同意見だ。それなのに桜の話しになると例外だ。心のバリアが外れるのだろうか。

2019年4月 花曇りの日

桜の花見は時期が多少ずれるだけで日本中で経験できる国民的行事。何しろ日本国内津々浦々、ソメイヨシノだけではなくそれぞれの土地の気候に合ったさまざまな桜がみられるのだから、これは世界的にもなかなか珍しいことかもしれない。

そしてその楽しみ方も、一人でも大勢でも、子どもも大人も性別に関わらず、お財布の中身にあった予算で(あるいは何もなくても)、とにかく桜に近づくだけで、春の柔らかな空気とほのかな甘い香りに包まれることが出来る。そして不思議な高揚感を味わえるのだ。

今のお花見スタイルが確立したのは江戸時代といわれている。錦絵、特に風景画と美人画で多くのお花見風景が描かれている。当時、貴賤問わず老若男女が楽しめる娯楽の場として、幕府主導の植樹が江戸の各地で行われた。それが全国に広がり、今や海を超えてアメリカは首都ワシントンのポトマック河畔や、さまざまな州にもたらされている。

春になると日本人はどこにいても桜を探す。つぼみから開花、風に吹かれ、雨に打たれ、散り始めても散って水面を漂っていても…どんな瞬間も美しい。他国の人たちも一度桜を見るとまた見たくなるらしい。

桜の開花を待つ甘やかな心のざわめき…

少し魔性めいているかも…桜の花には人を引きつける特別な魅力がある。