《妹背山婦女庭訓》の出版時期

以前、私の手元の《妹背山婦女庭訓》には改印がないという話をした。作品上に改印がないとなれば、絵師の活動時期と照らして改印制度が廃止されたあとの時代1875(明治8)年以降と考えるしかない。

これまでの調査での芳瀧の活動期は“明治中期”までという、これまた大雑把なもの。明治は45年までなので、仮定とするざっくりした時期は1875(明治8)年 〜 1887(明治20)年前後となる。

役者絵の出版時期確定の裏付け探しの場合、役者の動向も役に立つ。

浮世絵版画の役者絵には、キャラクター名と役者名が書かれていることが多い。これを頼りに、その役者がそのキャラクターを演じたのはどこの劇場で、いつ興行されたかという情報を探っていくのだ。

歌舞伎役者の名前は名跡として受け継がれるものが多いため、何代目かというところは要注意。活動期間が短いとか、あまり人気のない役者の場合も捜索が難しくなる。それでもやってみる価値のある調査だろう。