おふね

今日は「おふねは誰か」の謎。

まず、おなじみの神霊矢口渡の絵本番付で見ていく。

『神霊矢口渡』絵本番付(部分):arcBK03-0094-166 
立命館大学アート・リサーチセンター 所蔵

上の男性二人と振り袖の女性。中央の人物の足下に文字が見える。女性の下に右から横書きで「おふ袮菊次郎」。振り袖の袖にも重ね扇に菊の字が見える。となりの勇ましい(りっぱなお腹の)男の足元には縦書きで「頓兵衛歌右衛門」、腿のあたりには成駒屋の定紋祇園守がみえる。

このふたりこそ、頓兵衛とおふね父娘。
おふねを演じたのは尾上菊次郎、頓兵衛は中村歌右衛門。
尾上菊次郎は4代続いたようだが、この菊次郎は1814(文化11)年生まれの2代目。歌右衛門は1836(天保7)年に襲名した4代目のようだ。

錦絵の場合も見る人がわかりやすいように役者の着物に定紋や替紋が描かれていることは多いが、国芳の《頓兵衛娘於ふね》のおふねの着物には役者の手がかりが見えないところを見ると、配役が決まらないうちに作業に取り掛かったのかもしれない。