《妹背山婦女庭訓》 その3

画面上で黒枠赤地に文字が書かれた短冊が人物の近くに置かれている。役者絵にはこうしたレイアウトをよく見かける。それぞれ近くの人物のキャラクター名とそれを演じる役者名が書かれているのだ。

BlueIndexStudio所蔵

紙面左上から

①「妹背山婦女庭訓 巻ノ六 大尾」
②「笹木芳瀧画」

ひと枠おいて一番下
③「日本橋南詰 本安版」

反対側、右上から時計回りにいきます!

1)「橘ひめ 中村福助」
2)「藤原淡海 中村宗十郎」
3)「荒巻弥藤次 大谷龍左衛門」
4)「金輪五郎 尾上多見蔵」
5)「玄上太郎 實川延若」
6)「宮越玄蕃 實川菊蔵」
7)「藤原鎌足 市川鰕十郎」
8)「入鹿大臣 **之入鹿(?)」

注:この欄は、一行目の「入鹿大臣」は木版印刷ですが、二行目はなんと直筆だ。誰がいつ書いたものか。めずらしい謎解きのおまけ付き。

ところでこの作品、改印(極印)が見当たらない。

改印とは、幕府による出版統制のために行われた検閲で、1790(寛政2)年から1875(明治8)年まで行われたものだ。大量に出版された錦絵の謎解きには欠かせないヒントとなる。

改印は作品内に置かれるのが一般的。芳瀧の活動期、安政(1854年11月−1860年2月)〜 明治中期を考慮してすると、1875年(明治8)の改印終了後の作品の可能性がある。