橋の上の玉葱

「東海道五拾三次之内 日本橋」安藤廣重 1830-186

「日本の橋の上の玉葱みたいなもの」あれは何だと、外国の方に何度か聞かれた。

擬宝珠のことだ。

そういえば橋だけではなく、高貴な建造物の高欄でも見かける。

『日本大百科全書(ニッポニカ)』によると、高欄(こうらん)の親柱(おやばしら)の頂部につく宝珠(ほうしゅ)形の装飾で、頂部を削り整えたものや青銅製または鉄製の金物をかぶせたものがあるとのこと。

 「仏典では、宝珠は海底に住む竜王の頭から出現したもので、毒に侵されず火にも燃えない霊妙なものとし、それを擬したものが擬宝珠である。擬宝珠に金属製のものが多いのは、親柱頂部が雨水で腐朽するのを防ぐためにかぶせたからである。」    

宝珠は願いどおりの宝を出す珠のことで、如意輪観音や地蔵菩薩の持ち物だそう。それと五重塔の頂部にある飾りも宝珠とよぶとか。その宝珠を真似て作ったものだから擬宝珠というそうだ。

木造の橋がかけられていた時代、欄干の擬宝珠は親柱を腐朽から守るだけではなく、川の氾濫や橋の落下などから通行人を護る願いも込められていただろう。

早速Googleで検索。伊勢神宮 内宮の宇治橋、京都の三条大橋、盛岡の上の橋のほか、復元されて真新しい鳥取城跡内堀にかかる擬宝珠橋など各地で見られるようだ。名所絵で有名な日本橋の擬宝珠は浮世絵に残るだけになってしまって残念。

次回誰かに聞かれたら、今までよりマシな説明ができそうだ。

<参考文献>
工藤圭章「擬宝珠」『日本大百科全書(ニッポニカ)』小学館