お気に入りの紅茶

コーヒーもお茶もという点で二刀流といえるかもしれない。お茶もカテゴリー毎に好きなブランドがある。COVIDパンデミックの弊害で我が家の好みの常備紅茶が切れてからかれこれ一年。やっとオンラインで購入が可能になった。

今回は初めて簡易ボックスの包装をオーダーした。届いたものを検品しているとパッケージの後ろに「Okakura Kakuzo」!
なんと岡倉覚三著『茶の本』からの引用が添えられているのだ。

岡倉覚三は日本では東京芸大の創立に貢献し、アメリカではボストン美術館日本美術部門の設営に尽力した。ボストン美術館には彼の号「天心」を冠した小さな日本庭園Tenshin-en(天心園)もある。

『茶の本』は岡倉が英文で執筆した4作(『東洋の理想』『日本の覚醒』『東洋の覚醒』と本作)のうちの1冊。1904−5年にかけて書かれ1906年にニューヨークの出版社Duffield & Companyから刊行された。茶道をテーマに物心両面の日本文化が茶をとおして語られています。ちなみに1904年3月岡倉はボストン美術館の中国・日本部顧問に就任している。

「Meanwhile, let us have a sip of tea… Let us dream of evanescence and linger in the beautiful foolishness of things. – Okakura Kakuzo, The book of tea」

「その間に一服のお茶をすすろうではないか。… はかないことを夢み、美しくおろかしいことへの想いに耽ろうではないか。」
(岡倉天心著『茶の本』)

イギリスの紅茶のパッケージに使われているとは。ボストン美術館ファンとしては同館に縁の深い岡倉さんは以前から親しみも感じていた。思いがけないところで再会した気分だ。

あたたかいお茶をすするひとときの、えもいわれぬ脱力と幸福感。たしかに、瞬く間の壺中の天へと誘われているのかもしれない。
日本とイギリス、深いお茶愛は通じるものがあるようだ。

<参考文献>
岡倉天心 (涌谷秀昭 日本語訳)1994「茶の本」講談社学術文庫

さくら、さくら…

春先おひさまが機嫌よく顔を出し始めると、頭に浮かぶのはやっぱり桜、さくら、サクラ。

日本の春の話題は何をおいても桜。でも、国を離れていても日本人の間では春の会話はやっぱり桜だ。3月帰国などど口にしようものなら、「いいなぁ、お花見!」200%の確率でこういう返事がかえってくる。どこかで桜が見られるという話題は、たとえ初めて会った日本人同士でもかなり盛り上がる話題。

日本人同士というのは意外と人見知りというか、海外で同郷の人を見かけても気軽には近づかない。これは親しい長期在住者のなかでは皆同意見だ。それなのに桜の話しになると例外だ。心のバリアが外れるのだろうか。

2019年4月 花曇りの日

桜の花見は時期が多少ずれるだけで日本中で経験できる国民的行事。何しろ日本国内津々浦々、ソメイヨシノだけではなくそれぞれの土地の気候に合ったさまざまな桜がみられるのだから、これは世界的にもなかなか珍しいことかもしれない。

そしてその楽しみ方も、一人でも大勢でも、子どもも大人も性別に関わらず、お財布の中身にあった予算で(あるいは何もなくても)、とにかく桜に近づくだけで、春の柔らかな空気とほのかな甘い香りに包まれることが出来る。そして不思議な高揚感を味わえるのだ。

今のお花見スタイルが確立したのは江戸時代といわれている。錦絵、特に風景画と美人画で多くのお花見風景が描かれている。当時、貴賤問わず老若男女が楽しめる娯楽の場として、幕府主導の植樹が江戸の各地で行われた。それが全国に広がり、今や海を超えてアメリカは首都ワシントンのポトマック河畔や、さまざまな州にもたらされている。

春になると日本人はどこにいても桜を探す。つぼみから開花、風に吹かれ、雨に打たれ、散り始めても散って水面を漂っていても…どんな瞬間も美しい。他国の人たちも一度桜を見るとまた見たくなるらしい。

桜の開花を待つ甘やかな心のざわめき…

少し魔性めいているかも…桜の花には人を引きつける特別な魅力がある。

お菓子をつくる幸せ

同じキッチンに立つのならお菓子作りがいい。プロが作ったお菓子ももちろん好きだが、自分でお菓子を作ることには、それとはちがう楽しみがある。

何をやっても上手く行かない時や精神的に疲れている時こそ、やる気がでる。一番は夜中のお菓子作り。

仕事魔だった頃は特に仕事の後しか時間がない。まずはシャワーを浴びてスッキリしたところで作業開始だ。お菓子作りは途中で味見ができない。計量が命という緊張感が雑念を払ってくれるとおもっている。
オーブンに入れたら片付けをして、お茶を入れる。そしてオーブンの前に椅子を移動して座りこみ、ゆっくりお茶を飲みながら焼きがるまでを見続ける…この時間、紛れもない至福。

さすがに今は夜中の作業はしないが、オーブン前の座り込み凝視はかわらない。

昔見たメリル・ストリープがアメリカ人料理家ジュリア・チャイルドを演じた映画『ジュリー&ジュリア』で、ジュリアに心酔するジュリーがチョコレートケーキを作るシーンがあった。

「本当にな〜んにもうまく行かない日、家に帰ってチョコレートソースを作る…なんて心地いいの?!」とジュリーの台詞。

同感だ。お菓子作りはリラクゼーション。筋肉の緊張がほぐれる。

ということで、久しぶりにチーズケーキを焼いてみた。どれをとっても高カロリーの材料で、コレステロールに敏感なお年頃としてはめったに作らないが、せっかくなので美味しく頂こう。

eBook

紙の本好き。紙に印字したインクの匂い、感触、内容を想像させる装丁をみるとワクワクするし、読みすすめるたびに一方からもう一方へと1枚づつ紙が送られてその厚さが移動していくさまも、はたまた熱中した本の残り20ページあたりからスローダウンしたり、とにかく紙の本は楽しみが多い。

にもかかわらず、今や不本意にもアマゾンのeBook、Kindle本のヘビーユーザー。

理由は3つ。

1つ目の理由、英語が苦手でも英語の本は原書で読みたい。
最近のeBookは各国語の辞書が内蔵してある。わからない単語が出てきても、わざわざ紙の辞書や電子辞書を引く手間が省ける。

内蔵辞書を使っていると単語そのものは全く記憶には残らない。だからといって紙の辞書や電子辞書を引きながらだと内容への集中力が途切れるし、あまりにも時間がかかって挫折必至だ。

2つ目は、日本の本も読める。
アカウントさえあればどこの国のKindle本もダウンロードできるので便利だ。日本の本も新刊本は随分増えている。ただ、アマゾンは各国それぞれにアカウントが必要。一つのデバイスで複数アカウントを管理できるとさらにありがたいが、遠方にいながら読めるだけでもうれしい。

最後に、オーディオブック。
北米では本をプロが読み上げたオーディオブックが多い。アマゾンの書く本のページには、紙の本、Kindle本、オーディオブック付と3種類の値段が表示されているのが普通だ。車社会のせいか運転中に使う人が多いという。私の場合、英語の本をオーディオ付で購入。すでに読んだところを聴いてにわか英語学習に役立てる。しかしオーディオブックから始めると自分のあまりの英語力の低さに先が続かなくなることがあるから要注意。先に本を読んで内容がわかってから聴くと言葉が明瞭になって、ちょっといい気分になる。

というわけで、アマゾンの宣伝をする気は毛頭ないが、洋書を読了できずに自信がなくなっている方にはどこのブランドでもいいからeBookを試してみてはどうだろう。

フィロデンドロン・バーキン

はじめてのフィロデンドロン・バーキンの育て方。

まず鉢に差し込んであったパンフレットによれば、中くらいの日差しで10℃以上の場所において、水やりは表面から2インチ(約5cm)の土が乾いたら与える。6ヶ月毎に肥料を与える。成長は遅い、とのこと。あまりに大雑把なので日本のサイトをチェック。

内容はざっくり言えばおなじなのに丁寧な説明。これもやっぱり文化の特性。パンフレットの内容に日本のサイトの説明を加えるとこうなる。

「明るめの場所を好むので、直射日光は避けてカーテン越しの窓際や、窓から離れたところでだいたい冬でも最低5〜10℃を保てる場所に置きましょう。」

「水やりは、春から秋にかけては土の表面が乾いたらたっぷり与えて、鉢の底から不要の水を出して受け皿などに残さないようしましょう。冬は極力控えめに、枯れない程度にあたえます。こまめに葉水も与えましょう。」

「春から秋は生育期なのでひと月おきに緩効性化成肥料をあたえましょう。」

緩効性化成肥料に若干の不安を感じるが、他はなんとかなりそうだ。

みどりのちから

なんだか気持ちがスッキリしない。
そんなときは家族も何か感じるようで、Home Depotに行こうと声がかかる。

Home Depotいわゆるホームセンターで家の中の必要なもの、建材や工具、電気製品、家具など食べ物以外だいたい揃う便利な店だが、私にとっては植木屋さん。

入った途端、正面の一角が濃淡のみずみずしい緑で埋め尽くされています。運良く観葉植物が大量に新入荷したばかりのタイミング。これは幸運。この店の植木コーナーは巨大だが気をつけないと病んだものも紛れ込んでいるからだ。

そこで目を奪われたフィロデンドロン・バーキン。

新葉の斑が繊細で凛としていて、濃い緑とのコントラストも美しい。角度を変えたり、離れてみたり。根のしまり具合や葉の力など一鉢一鉢チェックすること何十分。植木鉢をラックから出したりしまったりしながらをしつこく見て、語りかける。人が少なくて幸いだった。

Philodendron Barkin

帰宅後早速お清め。鉢周りはもちろん、葉を一枚一枚湿めらせたキッチンタオルで優しく拭いて。そして柔らかな日差しが一日中入る部屋におさまったバーキン。

緑色は人間の目が最もリラックスできる色。自然の生命力の象徴で、成長や希望、健康のイメージを人間に与える癒やしの色とも言われる。普段でも、観葉植物が視界に入ると、すっと気持ちがリセットされて、こころが和らぐ。

モヤモヤ重症気味のときは、じっくり対話をするつもりで植物と向き合って、ゆっくり世話をする。何もすることがなければ、とにかく色んな角度から見る。

すでにかなりスッキリ、リラックスできている私。

絵はがき

近年は届く機会がめっきり減った絵はがき。さらに昨年からのコロナで遠出もできず、観光地で買うこともない。

今日は、引き出しの中の観光地の絵はがきを整理。そこで日本のものと他の国のもの、ちょっと趣が違うことに気づいたのだ。

日本の絵はがきは、浮世絵版画の名所絵と似ている。各地のランドマークに季節感そえるのがお約束だ。紅葉の清水寺、伊豆の河津桜並木、雪の白川郷などなど、季節ごとの自然の表象を加えることで、各地の名所がよりリアルな美しさをみせている。

一方で海外の観光地の絵はがきは、季節感というよりは時間ごとの日光の変化を意識している感じがする。明るい日中の日差し、夕暮れ時、夜の照明と、主題となる場所が日の出から日没あとまで、光の効果で表情を変えていく瞬間を切り取ろうとしている。

絵画の例を取れば、印象派のクロード・モネも光の効果に惹きつけられて『積みわら』や『ルーアン大聖堂』など、同じ素材を時間を変えて制作しているシリーズがある。ヨーロッパ絵画での風景画のシリーズ化は浮世絵・名所絵の影響だったと言われている。

いずれも美しい瞬間を残そうという意図だろうが、国民性か民族性か、美しさを求めるポイントが違うようで、なかなかに興味深いものだ。

 胎毛筆

赤ちゃんが初めて散髪した髪の毛で作る筆のこと。
お母さんのお腹の中にいた時に生えた髪の毛で作るから胎毛筆というらしい。子どもの誕生記念やお守りとするものだ。

私の年代なら「へその緒」の意味合いといっしょなのかもしれない。

昨年、友人のYちゃんが長女Kちゃんを出産した。令和元年生まれの命名書を依頼され、ずっとKちゃんの成長ぶりを見せてもらっている。何をしても可愛らしいのは言うまでもないが、子供の成長って本当に力強いものだとあらためて感心。ほとんど親戚の気分になっている。

先日Yちゃん夫妻から、胎毛筆について、どういう準備が必要かという相談をうけた。私自身詳しくは知らなかったので、行きつけの筆屋さんに問い合わせてみた。

通常、生まれて半年〜2年くらいの初めてハサミを入れる髪の毛で作るそうだ。頭頂部・側頭部の髪の毛が最適とのこと。

量は髪の毛を束にして直径1cm程度、長さは5〜10cmが目安。

問い合わせたのは老舗の筆屋。職人の手作りで出来上がりまで6ヶ月程度かかるそう。

生まれてすぐの体重計にのせられた小さな女の子の写真が病室からおくられてきてから約一年。健康にすくすく育っている。髪の毛も伸びてきたけれど、今はCovidで帰国もかなわない。Kちゃんは頭のてっぺんの柔らかな髪の毛をリボンで止めて、生まれてはじめてのヘアカットを待っている。

Kちゃんの唯一無二のお守り、おかあさんとKちゃんをつなぐ絆の証。
早くできることを願っている。

オンラインオーダー、ところかわれば

パンデミックに入り、我が家は感染のリスク回避のために買い物はほとんどオンライン。それもこれも配達をしてくれる人たちのおかげだ。本当に有り難いと思っている。

最近、友人の誕生日が3件、そのうち1件は国内、2件は海外だ。昨年から国際便の遅れが甚だしいと聞いていたので贈り物の現地手配を試してみた。
それがちょっと面白かった。

まず国内、サンフランシスコ宛。

利用したのはアマゾンです。日常的によく使うので私のデータは登録済み。ギフトオプションを選んで短いメッセージも記入できます。受取人の詳細を記入して決済までもスムーズ。一つ問題だったのは、同じブランド(出店)のものを2つ選んだのに、別々の到着で、しかも一方しかギフトパッケージにならなかったのは不思議。

次に東京宛。

都内大手百貨店のオンラインサイト。初めての利用で、まずアカウント作成で戸惑った。海外の住所記入の設定があったのだが電話番号は日本のものしか記入できず必須項目になっていてスルーできない。やむなく実家を連絡先に記入。ギフトオプションでは、のし紙の選択肢の充実ぶりに眼を見張る。ただ、カジュアルなリボンの包装はなく、”シール”というのがあったので書いてある内容もわからないままそれを選んでみた。ギフトオプションの選択肢が多いのは日本独特の贈答習慣のためだろう。ただ、自分に必要がないところもきちんと”はい” ”いいえ”の意思表示をしなければ先に進めないところが、なれないせいか、なかなか骨が折れた。

最後はミラノ宛。

手配したのはイタリアの大手百貨店。こちらも初めての利用。アカウントの作成はとてもシンプル。私のデータを入力し送り先も入力。スムースに進んだ。しかしギフトオプションはいつ出てくるのか?そう思っている間にあっという間に決済のボタン。確認事項の送り先の欄で、何故か私のeメールアドレスが送り先欄に記載されている。念の為、最初から慎重にやり直すも二度目も同じだった。これはもしや、自分以外の人に送るという設定がなさそうだ。仕方なくラッピングも不明なまま決済ボタンをクリック。

3件とも、予定通り先方に届きました。3カ国の手続きの違いは生活習慣のちがいと考えて良さそうだ。しかし家にいながらこんな遠隔操作で贈り物が送れるとは、便利な時代になったものだ。

年賀状

昨日、日本からの年賀状が一通届いた。

郵便ボックスを開けて字を見ただけですぐに差出人がわかった。住所の綴を間違わないように気をつけながら書いている緊張感も一目瞭然よくわかる。

封筒に触れると柔らかな和紙の感触。出してみると雲龍の柄。もうほとんどシャーロック・ホームズ状態で色んな角度から確認。

いつもなら、見るものをとりあえずとにかく消毒なのに、すっかり惹きつけられてそれもしばらく忘れていた。そして遅ればせながら消毒開始。しかしそれもいつもより柔らかな紙に消毒液加減しながら染み込ませてごく表面だけを丁寧に丁寧に。

きれいな切手、広重の桜の嵐山。浮世絵好きの私への気遣いもうれしい。
封筒を開く前なのに何度「ありがとう!」とつぶやいたことか。

さて、中から出てきたのは二つ折りにした美しい楮紙。その中に、お年玉付き郵便はがきが挟んであるだ。外から透けないようにということもあるだろうが、新しい年の挨拶状が清らかに届くようにという祈りのようにも思える。

はがきはもちろんお約束の干支のデザイン。今年は丑だ。

欧米の友達なら「ZENだわ〜」と言いそうなすっきりとしたレイアウト。そのせいか新年の幸せと健康を祈願する思いがいっそう強く伝わってくる。

昔々、書の師曰く。年賀状は新年を寿ぎ、挨拶をするのが目的。余計なことは書かない。はがきを用いるのは、たくさんの年賀状が届く時に余計な手間をかけさせないため。先方への心配りが肝要、とのこと。

心配り。

この場合エアメールが良い状態で安全に届くように、あえて封筒を使ってくれたことが心配り。はがきや手紙はこんなにたくさんの幸せを相手にもたらしてくれるのだ。

急がないときは手紙を書こう。 心を込めて。