謎だらけの磬子どの

前回に続き、磬子の刻印についてです。

BlueIndexStudio所蔵

これは胴体部分ではなく、真上から見える縁に刻印されている。つまり胴体の厚みの部分に4文字の漢字が見えるのだ。

「作  金 竜☆」

最初の「作」は他の字よりも小さめ。そのあと一文字目は「金」、余白を置いて「竜」、次の最後の文字が「華」か「辛」のようにみえるが判然としない。並びとしては氏名のようだ。

中国・韓国出身の年配の友人たちにも見せたが、予想できる文字を試し書きしながらも首をかしげるばかり。「韓国の名前っぽい」というところで話が行き詰まってしまった。

とにかくこれが金竜☆という職人の落款と見てよいだろう。この金なにがしが大和屋重作の依頼で安永3年9月13日の寄進のためのこの磬子を制作したと仮定できそうだ。




 

磬子の彫物

今回は磬子の彫物を見ていこう。

ところで、この磬子素材。見た目の印象ではブロンズ。表面は漆がけのようで艶がある。

BlueIndexStudio所蔵

側面上部の刻字。右から「大和屋重作 安永三年申午九月十三日」

安永三年、1774年、江戸時代中期だ。

大和屋といえば商人の屋号として時代劇でも聞く機会が多い。
大店の主が菩提寺に寄贈したものかもしれない。

江戸時代の大和屋重作をオンライン検索したが、成果がなかった。
あまりによくある屋号で逆に難しいのかもしれない。

磬子


こちらの磬子。

BlueIndexStudio所蔵

近所のジャンク屋(親しみを込めてこう呼ぶ)Phillの店で写した画像。個人宅の仏壇のお鈴サイズではない。

実寸は、直径47.8cm, 深さ40cm, 胴回り160cm

磬子と書いて「けいす」とも「きんす」さらに「大徳寺りん」とも読むそうだ。
知らなかった。
そして新しいものはオンラインショップ楽天でも見かけた。自宅用に購入するというのは一般的ではないだろうから、やはりお寺さんをターゲットにしているのだろう。今時はこうしたものもオンラインショッピングするのだと、これまた初めて知った。


あたらしい同居

ウチはたびたび同居が増える家だが、今回は少しスケールが違う。

いつもの近所のジャンク屋さん。
大型品が置かれるスペースの真ん中、古い看板や用途が判然としない謎のもののなかに、なんだか見覚えのある色と形。どうみてもお寺のご本堂におられる方。

地面に直置きされている。
あっけにとられて呆然と見ている私に店の主人は「ねえねえ、なんて書いてるのー?」たびたび立ち寄るうちに、勝手に私を日本・中国ものの鑑定人と決めている。漢字が読めると誰でも鑑定人になれるようだ。
「ほら、ガラスボードのせるとおしゃれなコーヒーテーブルになるし、植木のカバーにもなるよね〜」「でも、ちょっと座りが悪いから底を平らにしないと!」
あきらかに何者かを知らないで店頭に並べている。

お労しいと思いながらもそのまま帰宅。
翌朝、うちのM「なんか、呼ばれてる気がする…」

そして一時間後、快適な移動を提供するために持参したビーチタオルにくるまれたお姿のまま、落ち葉が散り始めた芝の上に鎮座。

まずは長旅の身を清めていただき、我が家に同居と相成り候。