芳瀧の似たもの探し 縁取りの巻+ 

芳瀧の妹背山、似たもの探しの第一弾と思わぬ発見の話。

まず、無いわけではないけれどあまり多くは出会わない、錦絵作品の「縁取り」に注目してみた。縁取りは他の絵師の作品にも見かける。幾何学模様、特に一方に三角形の底辺を並べてギザギザ模様の縁取りは多いデザインだ。
こちらの芳瀧作品もそのひとつ。

芳瀧筆『仮名手本忠臣蔵大切』(1873) AcNo: arcUP2391
立命館大学アート・リサーチセンター所蔵

このギザギザは模様は「だんだら模様」といわれるものだ。赤穂浪士の羽織の袖口や裾に見られる。この羽織は歌舞伎の衣装でも使われていたために一般にも容易に知られることになったようだ。多分そのためだろうが、絵師に関わらずこのだんだら模様の縁取りが「仮名手本忠臣蔵」に登場することが多い。絵草紙屋に多くの錦絵が並んでいても、遠くからもひと目で忠臣蔵の錦絵とわかるだろう。

仮名手本忠臣蔵は歌舞伎外題としてはとにかく集客が期待できる人気演目。錦絵の方もまた連作が多く芝居に負けない人気だったようだ。

さて本題はこちら。

「妹背山婦女庭訓」部分

芳瀧作品で縁取りのある作品もやはり仮名手本忠臣蔵。1865(慶応元)年の連作と1873(明治6)年の連作だ。いずれもだんだら模様で縁取られている。1873年は芳瀧の改姓のぎりぎり前だろうか。

しかしこの「妹背山」は青い長方形が規則的な空間を開けて連なっている縁取り。オンライン上の芳瀧作品をあちらこちら見て回ったが、これと同じ縁取りの作品はみあたらない。

ただ、こうして縁取った作品を見ていると、縁取りは仮名手本忠臣蔵のような連作に使われていることが多いようにみえる。

妹背山婦女庭訓も歌舞伎演目としてはどの時代にも人気がある。また、作品の題名に「巻の六 大尾」とあり、巻の一から巻の五も存在する連作であろうと想像する。

そこで縁取り探索は一旦中止して、連作があったかどうか、手がかり探しをはじめた。
すると、思いのほか簡単に手がかりがつかめた。

酒井好古堂(日本最古の浮世絵専門店とのこと)のサイトに、日本浮世絵博物館による芳瀧作品の総目録が掲載されている。その中に日本橋南詰本安版の《妹背山婦女庭訓》が「巻ノ壱」から「巻ノ六 大尾」まで6作品記載が確認できる。作品年は残念ながら空欄だ。

妹背山婦女庭訓は連作で存在しているのは確かなようだ。

<参考サイト>
浮世絵・酒井好古堂 (4/08/2021閲覧)
http://www.ukiyo-e.co.jp/64680/2021/01/

ARC浮世絵ポータルデータベース “芳瀧”(4/05/2021閲覧)
https://bit.ly/3fVKWCf

MFA “Yoshitaki”(4/08/2021閲覧)
https://collections.mfa.org/search/objects/*/yoshitaki

Japanese Woodblock Print Search “Yoshitaki”(4/04/2021閲覧)
https://ukiyo-e.org/search?q=Yoshitaki