外国語に翻訳された日本の本

翻訳本の話し。

日本語の知識がない人が日本の作品を読みたい時、外国語に翻訳されたものを読むことになる。ところが残念なことにその翻訳本が少ない! 他の言語に比べたら多そうな気がする英語訳でさえも、日本語に翻訳された他言語の本に比べようもなく少ない。最近はアニメが日本語への入口になっているなど日本文化に興味を持つ外国語話者は増えているようだが、読書の需要はまだまだのようだ。

実は先日、あるイタリア人からオススメの日本の本をおしえてほしいとメールがあった。文章を書くことを専門としたジャーナリストであるこの女性は、日本人のものの考え方、美意識などを文学を通じて理解しながら日本の造形文化を楽しんでいる。

もう10年以上前、川端康成の『掌の小説』(イタリア語訳)をプレゼントしたことがあった。私自身この作品がとても好きで、どうしても彼女に読んでほしかったのだ。うれしいことにとても気に入ってくれて、それ以来たびたび、おすすめ本のリクエストがあるというわけだ。

さて今回リクエストのために、まずはAmazon.itで翻訳本チェック。おすすめしたい本があっても翻訳されていなければどうしようもないからだ。結果は本当に本当に少ない!! 近年のものならデジタルになっているかと探したものの、それも期待はずれ。翻訳って本当にむずかしいのだ。それはわかるが…なんとかなりませんか!と悲しい気分。せっかく読みたい人がいるのになぁ。

こうなるとあるものから選ぶよりほかない。とは言え、この2冊、文句なしの太鼓判というレベルで決定。

谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』と夏目漱石の『吾輩は猫である』

谷崎のこのエッセーは日本文化理解への王道。漱石の猫は力まず読めて猫に語らせた漱石の(自虐的?)哲学に満足感ありと判断した。オリジナルはすばらしいのであとは翻訳しだいだ。

昨年来のパンデミック。ワクチンが始まった今でさえ目に見えない閉塞感が拭えないなかで、異文化から吹く風が、彼女の夏の休暇にポジティブな空気をもたらしてくれることを願っている。